ヴァンパイア夜曲
呼吸が止まった。
何を言っているんだ、この男。
ヴァンパイアを始末するはずのグリムリーパーが自ら血を授けるなんて聞いたことがない。
「どうして…?」
ついそう尋ねると、彼は即座に私に答える。
「お前には恩がある。命を救ってくれた対価に血をやることは、何も俺の流儀に反してない。…それに、ロザリオが壊れたのもお前が俺を追ってここに来たからだしな」
シドが恩返しなんて言い出す男か?
まさか同情ではないだろう。だが、私は善意だけで彼がこの提案をするとは思えなかった。
すると、私の心中を察した彼は真剣な瞳で強く言った。
「何も裏はない。見返りなんて要求しない。うだうだ迷ってる暇があるなら俺の気が変わらないうちにさっさとしろ…!ヴァンパイアに噛まれるのは慣れてる」
私を欲に溺れたスティグマと同類にするな。
だが、そんな余裕もなくなってきた。もう思考が飛びそうだ。
しかし、私はぐいっ!と彼を押しのけた。
目を見開いた彼へ絶え絶えに告げる。
「血は吸えない…!シスターじゃ、いられなくなる…!」