ヴァンパイア夜曲
どくんと脈打つ体。もう、本能には抗えなかった。
窓から差し込む光に照らされた彼の首筋。
胸板に体重を預け、そっと牙を突き立てた。
小さく息を吐くシド。
しかし、彼は痛いとは言わなかった。ただ、されるがままに私の牙を受け入れた。
ごくりと飲んだ彼の血は私の体を駆け巡る。だんだん心が落ち着いて、ふわふわした快感の波に溺れ始めた。
ぎゅうっと彼へしがみつくと、背中を支えるようにシドも私を抱き寄せた。
欲に翻弄されて首筋に噛み付く私の目に映ったのは、廃墟と化した城の女神像。
「……シド……神さまが、見てる……」
皮肉にも、ここは聖堂だった。
曇天が晴れて太陽の光がステンドクラスから差し込むと、キラキラとした神の光が私たちの影をくっきりと映し出す。
「…この世に神なんていねえよ。周りの奴を救えるのも、自分自身を救えるのも、生きてる奴の出来ることだ」
シドはそう言って目を閉じた。
神を冒涜し暴言を吐いていた彼だったが、それはグリムリーパーとしての仕事の中で、スティグマに襲われて神に助けを乞いながら死んでいく人々をたくさん見てきたからなのかもしれない。
あぁ。
私は、彼の血に溺れていく。
そんな想いが芽生えた頃。
私の意識は、ぷつんと途切れたのだった。