ヴァンパイア夜曲
ミックを起こさないようにベッドから降り、マーゴットに続いて部屋を出た。
やがて辿り着いたのは淡いランプの灯りが溢れる修道院の離れ。それは院長であるマーゴットの私室である。
誘われるがまま中に入ると、そこにはソファに腰掛ける黒コートの青年がいた。
「シド…!」
私の声に、ちらり、と目線を上げるシド。
そんな私達を見たマーゴットは、ケタケタ笑いながら部屋の扉を閉める。
「まったく。シドがレイシアを担いで修道院に戻ってきたときは腰が抜けるかと思ったよ。みんなが寝静まった夜中だったからいいものの、レイシアの帰りを待って起きていたミックは大泣きだったんじゃぞ?」
ベッドサイドに寝ていた少年が頭に浮かぶ。どうやらミックは片時も離れず私の意識が戻るのを待っていてくれていたらしい。
椅子に腰を下ろしたマーゴットは、ふぅと小さく息を吐いて、まっすぐな瞳で私を見つめた。
「ついにヴァンパイアの血が目覚めちまったんだね」
それは少し悲しげだった。
彼女はこれから私が言おうとしていることを全て察しているらしい。
「マーゴット。…私、この修道院を出て行くわ」