ヴァンパイア夜曲
『ガァァァァッ!!』
しかし、スティグマは全て倒れたわけではない。
シドの銃撃を逃れた数体は、獲物を逃がしまいと私たちへ迫っていた。
「シド!前!!」
前方の脇道に新たな影が見えた。血に飢えた赤い瞳がギラリと闇の中で光っている。
(挟まれた…!?)
さっと血の気が引いた。
あぁ、神さま。
私はまだ死にたくない…!
呼吸が止まりシドが低く舌打ちした、次の瞬間だった。
水路の陰から一人の青年が飛び出した。
外套を羽織った身軽な彼はスティグマではない。その手にあるのは鋭く磨かれたレイピア。
一振りでスティグマの群れを灰に変える剣。それは流れるように綺麗で、一瞬の無駄もない太刀筋であった。
青年が胸元から出した十字架の刻まれた紙が、水路のコンクリートに魔法陣を描いていく。
『グァァァァッ!!』
魔法陣の中へ立ち入ったスティグマは次々に光に包まれて浄化され、まばたきする間に消えていった。