ヴァンパイア夜曲
やがて、水路に放たれた光が消えた。まるでロウソクの炎が消えたように、一瞬で辺りは薄暗い地下へと戻る。
言葉を失ってその光景を見つめていると、小さく息を吐いた青年が、すっと私の方を見た。
「大丈夫?怪我はない?」
コツコツと歩み寄ってきた青年は、ばさりと外套のフードを取った。
銀色の髪に翠の瞳。
その端正な顔立ちは美青年と呼ぶに相応しく、シドとはまた違う引力を持っていた。
(助けてくれた…?)
瞬きをして彼を見上げていると、青年は静かに微笑んで口を開く。
「カナリックの夜道は治安が悪いんだ。特に地下水路は危ないよ。悪い奴しかいないから」
穏やかな口調に、つい、どきんと胸が鳴ったその時。にこっと微笑んだ彼が優しく私の頰を撫でた。
「よかったよ。君みたいな可愛い子の顔に傷がつかなくて」
「えっ!?」
その瞬間。
表情一つ変えないシドが青年に向かって銃口を突きつけた。
鋭い光を宿した碧眼はギロリと彼を睨んでいる。
「なに出会い頭に口説いてんだ、てめぇ…。地下水路に悪い奴しかいないなら、お前もそのひとりだろ…?」
「わーっ!?ストップストップ!僕はいい人だから撃たないでーっ!」