ヴァンパイア夜曲


「ちょっと、シド!助けてくれたのに失礼でしょ…っ!」


慌ててシドの拳銃を引っ込ませると、翠瞳の青年は、ほっと安心したように肩をなでおろした。

未だに威嚇オーラ全開のシドは苦笑する彼を睨みつけている。すると、青年は私たちに向かって弁明するように口を開いた。


「嫌だな、そんなに警戒しないでよ。…僕はランディ。家に帰る途中で君たちが襲われている現場に出くわしたから加勢に入っただけさ」


ランディと名乗った青年は決して嘘を言っているようには見えない。

シドは私を庇うように立ちながらも納得したように息を吐いた。どうやら彼を味方だと認識したらしい。


「君たちはどうしてここに?この街では見かけない顔だね」


ランディの問いに、私はおずおずと答える。


「実は、旅をしてこの街に来たんだけど、宿屋までの道に迷ってしまって。地下水路を通るのが一番近道だと思ったから…」


「危険だとは知らずにここに来ちゃった、って訳か」


翠瞳の青年は、全てを察したように苦笑して、きょろりと辺りを見回した。そしてさっきよりもわずかに低い声で囁く。


「それなら僕が案内してあげる。地上よりわかりやすい地下水路といえど、この先は入り組んでいるからね」


外套を翻した彼は、こちらを振り返って小さく笑った。

その後。私とシドは救世主の登場に目を丸くしていたが、やがて彼の厚意に甘えて歩き出したのである。

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