ヴァンパイア夜曲

呆れたようにため息をついた青年に思わず目を見開くと、彼は我慢の限界と言ったように声を上げた。


「今月に入ってから七件目!酒場でのトラブル、市街での喧嘩に加え今回は女性問題…。まったく!たかが執事の分際で、あの男はどれだけベイリーン家の名に泥を塗ったら気がすむんだ…!」


怒りが収まらない様子のおぼっちゃま。何やら私たちの来訪を勘違いしているようだ。


「えっと、あのー…?」


「いい。言わなくたってわかるさ。君もランディに会いに来たんだろう?トラブルの苦情か?それとも、口説かれてここに来るよう言われたか?あいつの毒牙にかかった女性がここを訪ねてくることは日常茶飯事なんだ。…どっちにしろ、ランディは今不在だぞ」


「いえ、私たちはランディって人に苦情を言いに来たのではなくて、スティグマについての情報を…!」


するとその時、興奮収まらない彼は私の隣に立つシドに気がついたらしい。

はっとした彼は、ぽつりと呟く。


「まさかランディの奴、男がいる女性に手を出したのか…!?」


「チッ。ダメだレイシア。この金持ち、全然話を聞いてねえぞ」

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