ヴァンパイア夜曲
その時、ふいに部屋の扉が叩かれた。
開いた扉の先にいたのは銀髪の青年。見慣れないオールバックと燕尾服姿であるが、その顔は紛れもなく昨夜私たちと出会ったランディであった。
「レイシアちゃん…!?どうしてここに…?」
私の顔を見た途端そう言って目を見開く彼。「レイシアちゃん…?」と低く呟くシドをよそに、ランディはコツコツとこちらへ歩み寄った。
「僕に来客だって聞いてきたけど、まさか君だとは思わなかったよ。わざわざ会いにきてくれたの?」
「あー、えっと…、本当は偶然なんだけど…」
昨夜と同じにこやかな笑みを浮かべるランディにぎこちなく答えたその時。
わずかに目を細めたゴードルフが静かに口を開いた。
「ランディ。お前は、また無断で外出をしていたそうだな」
はっとしてゴードルフを見つめるランディ。その顔から笑みは消えている。
椅子を立ったゴードルフはゆっくりと部屋の扉へと歩いて行った。そして、すれ違いざまにそっと呟く。
「今日は満月だ。最近は街も治安が悪い。…あまり夜に出歩くんじゃないぞ」
「…はい。旦那様」