ヴァンパイア夜曲
すっ、と真剣な表情を浮かべるランディ。私たちの口からこの話題が出るとは思っていなかったらしい。
「“薔薇の廃城”か。…その件に関係があるかは分からないけど、ここカナリックで起きている事件に関わってる男がいるって話は聞いてるよ」
(“男”…?)
私とシドが眉を寄せると、ランディは静かに語り出した。
「カナリックの事件が起こり始めてから、僕はその原因を探ろうと、深夜に地下水路や街に出向いて調査をしたりスティグマを狩ったりしていたんだ。…そして、その中で“ローガス”と名乗る男が街で目撃されていることを知った」
「「“ローガス”?」」
「あぁ。ローガスは相手を“噛む”ことによってヴァンパイアを自由自在にスティグマに変えることが出来るらしい」
彼から聞いた言葉は、にわかに信じがたいことだった。
しかし、その話が本当なら、スティグマが多発していることにも説明がつく。
「一体スティグマが生まれれば、そいつに噛まれたヴァンパイアも血を奪われて、自分の血が多量に不足したことで吸血欲が目覚め、そいつもスティグマになる。…いわば、負の連鎖さ」