ヴァンパイア夜曲
普通、ヴァンパイアの血を吸ったとしても相手はスティグマにならない。無茶な吸い方をしないというのが暗黙のルールだからだ。
そのため、ヴァンパイアはたくさん血を吸っても害がない人間の血を吸うことが多いが、ランディの言った通りヴァンパイアを狙えば、スティグマを量産することも可能なのだ。
その時、シドが低く呟く。
「まさか、そのスティグマ製造機男が“薔薇の廃城”の犯人と同一人物だと?」
「断言は出来ないけど、その可能性は高いだろうね」
ランディは、シドの言葉にそう答えて腕を組んだ。
確かに、同じ力を持っている点において、ローガスという男を見逃すわけにはいかない。
私の両親を殺して、臣下達をスティグマに変えた男の手がかりをやっと掴めたかもしれないのだ。
「悪いけど、僕が知っているのはここまでさ。得た情報は名前だけで、ローガス本人を見たわけじゃないし」
後頭部で手を組んだランディは、そう言って苦笑した。
彼から思いもよらない情報を掴めたことは大きな進歩だ。“ローガス”という男を追い続ければ、いずれ私の兄にも偶然巡り会えるかもしれない。