365日のラブストーリー
「自分の住んでいる街がどんなところかよく知ってるのは、やっぱり好きだからなんですよね。神長さんきっと仕事で都内に来ることが多いのに、どうして横須賀なんだろうって思ったけど、納得です。なんだかわたしも行ってみたくなっちゃった」

「よかったら来週末に朝市でも案内しましょうか」
「えっ、ほんとですか?」

「たぶん朝四時前に起きてもらうことになりますが」
 始発電車すら走っていない時間だ。今日のように車で迎えに来てもらうとしたら、神長は一体何時に起きることになるのだろう。

「それってもう、現地に宿泊するレベルですよね」
 これは社交辞令かもしれない。気安く「行きたい」と口にすれば、迷惑をかけてしまうに違いない。

「いつか、機会があればお願いします」
 有紗は自分から一歩引きながら、神長の横顔を窺ったが、口元にわずかな笑みを浮かべるだけで、何も言おうとはしなかった。
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