365日のラブストーリー
「うちの夫はどちらかというと、若いお嬢さんが撮りたいはずだから、ね。お願い」

 もう一度頼まれて、有紗はしぶしぶ神長の隣に並んだ。身体を斜めに向けてから首と背筋を伸ばして、腹筋に力を入れる。他人のカメラに残るだけだとしても、少しはよく映りたい。すると寄り添うように提案されて、神長の手が背中に触れる。

 頬がみるみる熱を持つ。鼓動が伝わってしまったらどうしようかと、そんなことばかりを考えながら神長を見上げると、シャッターを切る音がした。

 礼を言われて恐縮しながら頭を下げると、婦人が有紗に耳打ちしてきた。
「彼はとても素敵な人ね」

 有紗は何度も首を縦に振った。

「とてもよくお似合いよ。彼もきっとあなたのことをとても可愛らしくて、謙虚でいいお嬢さんだと思ってるはずよ」

 そんなはずはないことはわかっている。それなのに、その言葉になんだか涙が出そうになってきた。
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