365日のラブストーリー
「せめてわたしがもうちょっと背が高くて、細くて、顔が小さかったら、横に並んでもおかしくなかったはずですけど。なんだか被写体がわたしじゃ、あのご夫婦にも申し訳なくて」

「それならば、もう少し俺の背が低くて、恰幅がよかったら、という考え方もできそうですね」
「ええ? それじゃあ神長さんじゃなくなっちゃいます」

「同じですよ、綿貫さんも。あの夫婦はそのままの俺と綿貫さんを撮りたいと思ったのだろうし、気にすることはないんじゃないですか」

「……わたし、自分に自信が持てなくて。だって、自慢できることなんてひとつもないし。そんな事を思ってうじうじしてるから、いつになっても素敵な人になれないんだって、わかってるんですけれど」

「綿貫さん」
「はい?」

「恋人はいますか」千晃のことを思い出して言葉に詰まると、
「無理に答えなくても結構ですよ」神長はさらりと流して、サンルームの外へと促してきた。
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