365日のラブストーリー
 自席に腰を下ろしかけた有紗は、書類が宇美宛てだったことを思い出して、部長デスクに向かう。レターケースの一番上、未処理の書類を入れるところにその封筒を入れて息をついた。

有紗は今度こそ自席に戻り、社内システムにログインした。人事部宛のメールを確認して、スレッドに書かれている各部署からの連絡事項をチェックする。

 目は必死に文字を追うのだが、神長から向けられた笑顔を思い出してしまい、内容が頭に入ってこない。もう一度読み返すのだが、気づくといつも思考がどこかへ飛んでいってしまっている。

またはじめから読み返す。繰り返しているうちに嫌になってきて、有紗はいったんログアウトした。違うことをしたほうが良さそうだ。今度は引き出しから未処理の書類を取り出して、デスクの上に置いてみる。

「綿貫さん、大丈夫?」

 隣席の同僚から声がかかって、有紗はまた自分の意識が他の世界へと旅立っていることに気がついた。
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