365日のラブストーリー
「週末に何かありました? ほら、これたべると元気が出ますよ」

 デスクにちょこんと乗せられたのは、長方形をした黄色い包みの菓子だ。有紗には見た瞬間にそれが何かわかった。ベルンのヘーゼルナッツミルフィーユ。定番三種の味の中ではこれがいちばん気に入っている。

「いつものごとく、もらい物だったりするんですけど」

 ときどき彼女はこうやってお裾分けをしてくれる。週末に食べ過ぎてしまったから、今週は少し甘い物を控えようと思っていたが、つい手が伸びる。

「ありがとうございます、いただきます」

 フィルムを剥いてひとくち囓ると、ふわりと重なったパイ生地が口の中でほどけた。チョコレートコーティングの甘さとヘーゼルナッツクリームのバランスも絶妙で、長い間愛されて定番になる洋菓子はやっぱり飽きのこない味なのだと納得してしまう。

ミルフィーユに浸りきっていると「カッコイイですよね、神長さん」と同僚が口にして、有紗はむせそうになった。
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