365日のラブストーリー
 店員に声を掛けてから、有紗と神長は空いているテーブル席にかけた。冬に外でビールを飲むなんて狂気の沙汰だと思っていたが、ストーブのおかげか暖かい。

「綿貫さん、なにか飲みますか?」
「神長さんは?」

「フラッグシップビールにします。ここでしか飲めないので」
「じゃあわたしも同じで。さっき飲み比べしたときも美味しかったし」

「大丈夫ですか? 無理にビールを頼まなくても」
「まだやれます」

 有紗はこの店の看板ビールをふたつ注文する。手持ち無沙汰なまま、辺りに目を漂わせていると、神長から話しかけてきた。

「綿貫さんは、クラフトビール詳しいんですね」
「いえいえ、わたしはぜんぜん。どうしてそう思うんですか?」

 話の内容はわかっていたつもりだが、ただそれだけで、前もって覚えてきた知識はひとつも披露していない。

「目を見るとわかります」
「えっ」
 慌てて顔をストールに隠すと、神長が笑った。
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