365日のラブストーリー
「わたしと話をするのは、楽しいですか」
 神長は一瞬きょとんとしたが、やがて目を和ませた。

「楽しいと思えない人を、テラス席に誘ったりはしませんよ。綿貫さんと話をしていると、優しい気持ちになります」
「それは、犬や猫と触れあってると、心が癒やされる的な……?」

「なんですか、それ」
 口元に手の甲を当てて笑いをかみ殺し、神長は顔をそむけた。

「ちょうどいい言葉が見つかりませんが。こういうのはなんて言うのかな」
 優しげな顔に、胸の奥が痛くなる。もうこんな風に話をすることも出来なくなってしまうかもしれない。それでも本当に自分は後悔しないだろうか。

神長を前にすると、どうしても迷いが出てしまう。振り切るようにビールを呷って、有紗は切り出した。

「わたし……、今日神長さんとお話がしたくて、宇美さんに飲み会を開いてもらったんです」
「何かあったんですか。俺でよければ相談に乗りますが」

 神長は変わらず穏やかな目を向けてくれる。
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