365日のラブストーリー
「もう退社に向けて動き始めていますし、やりたいことは固まっているので、当面はひとりで。あとは信頼できる人間に声を掛けてみて、というかんじですかね。ITでの起業はアイデアに左右される部分も大きいので、手を組まない限り深く話せないのが難点ですが」

「でも、きっとよくお話をすれば、ヴィジョンが伝わると思います。神長さんは人に何かを伝えるのがとても上手だから。前に仕事のプレゼンを聞かせてもらったときにもそう思いましたし。人を巻き込む強さや熱があるというか」

「だといいですけれど」

 気を取り直すようにそう言って、神長は自嘲めいた笑みを浮かべる。神長ほどの人でも、たったひとつのことに心を悩ませて、自分の力が信じられなくなることもあるんだ。

胸に閉じ込めている神長の苦しさを想像すると堪らなくなって、この人のためにできることなら、何でもしてあげたいという気持ちになってくる。
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