365日のラブストーリー
「気の利いた言葉が何も思い浮かばないんですけれど。独立はきっと神長さんなら上手くいくと思うんです。だから……応援してます。あとわたし」

 有紗は祈るような気持ちで神長の右手をとった。

「坂巻さんも心が変わることがあると思うんです。だって坂巻さんは、一度好きになった人を嫌いになんてなれないはずだし、神長さんの仕事を尊敬する気持ちは大きいだろうし。わたしが言っても、嘘みたいにしか聞こえないかもしれないけど、でも、きっと大丈夫ですから」

「……ありがとうございます」
「ごめんなさい、大事な話を聞かせてもらったのに、なにもできなくて」
 神長は唇の端をわずかに上げて、笑顔を返してくれた。

(こんな風に無理に笑って欲しいわけじゃないのに。わたしはどうしたら神長さんの心に入れるんだろう)

 それは坂巻にはできても、自分にはできないことなのかもしれない。笑顔を返したはずの有紗の頬を涙が伝った。
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