365日のラブストーリー
「あ、すみません。わたしやっぱり、ちょっと酔っ払っちゃってるのかも。でもこれを飲んだらもう戻りましょう、宇美さんずっと放置しちゃってるし」

 さりげなく目元を押さえて、有紗は明るい声を出した。

「神長さん、少しくらい酔っ払って忘れることがあったっていいと思うんです。わたし、まだぜんぜん飲めますから、いっぱい飲んでください。いくらでも付き合いますから」

「いくらでも、って。俺もそこそこ飲めるので大変ですよ?」
「でもたぶん、わたしのおなかの方がたくさん入るはずです」

 ぽん、とおなかを叩くと、神長がふきだした。グラスを空けて店員を呼び止める。一言二言会話をしてから席を立った。

 有紗もグラスを空けてから立ち上がった。鞄を取って早速移動しようとすると、神長から見つめられていることに気がついた。

(なんだろう?)
 後ろを振り返ってみるが、そこには特に変わったものは何もない。有紗が首をかしげると、神長は笑った。
< 230 / 489 >

この作品をシェア

pagetop