365日のラブストーリー
 普段から、何をするわけでもなく起きている時間だから問題ない。神長の表情から心理を読もうと、じっと顔を見つめていたのだが「バルでもいきますか?」という一言に、つい「行きたい」と声を上げてしまった。

 とっさにてのひらで口を覆ったが、ふいに見せられた笑顔に「好き」という気持ちがあふれそうになる。

「わたし実は前からずっと、スペインでバル巡りとかしたいって思ってたんです。でもその前に一回くらい日本で行っておこうと思っていて」

「スペインバルですか。それなら渋谷にいくつかありますね。それらしい雰囲気は味わえると思いますが、紙ナプキンを床に捨ててみますか?」

「あ、そんなこともできちゃうんですね。すごい」
「たぶん怒られますけどね」
 軽快な冗談を挟んで、神長は歩き始めた。さっきの打ち明け話などなかったかのようだ。

(神長さんはわたしのこと、友だちみたいに思ってくれているのかな? だからプライベートなことも打ち明けてくれるのかな)

 有紗は神長のすぐ隣に並んで、もう一度顔を見上げた。



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