365日のラブストーリー
5

 随分飲みすぎてしまった。有紗は寝室に入ると、メイクも落とさないままルームウェアに着替えを済ませる。

二軒目に行ったスペインバルでは今度こそ神長の分まで支払いをすることができたが、名残惜しくてつい誘ってしまった、三軒目のオーセンティックバーはいろいろと記憶が抜けている。

(神長さん……)
 優し気なまなざしを思い出す。

 渋谷駅で神長と別れてから、家までの道すがら千晃にメッセージを飛ばした。約束を果たした後からは、どっぷりと神長のことばかりを考えていた。

 本棚から春の雪をとって、有紗はベッドに寝転んだ。元町の西洋館をめぐっていた時に、彼はこの小説をなんと言っていただろうか。

(愛情の貫き方もそれぞれだから、根底に同じ熱があるのなら、それを悲恋と呼びたくない……、だったっけ)

 あれは坂巻への想いのことを言っていたのだろう。今思い返せば、心に引っかかったままだった言葉の意味もよくわかる。
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