365日のラブストーリー
 もし今千晃に電話をすれば、すぐにここまで迎えに来てくれるだろう。心配して、このまま泊まっていけと優しく声をかけてくれるに違いない。けれど甘えることはできなかった。

(痛い……)
 千晃の顔を思い出したとたんに、痛みの波が襲ってきた。

 時間をかけて触れ合って、どうにか千晃の身体を受け入れた。相手の望みを叶えられたことにほっとしても、それも束の間だった。ことが終わると千晃は「ごめん」と深く項垂れた。

 それからは話をしても、何をしていても上の空だった。

 初めては痛みを感じることも多い。けれども身体の奥まで繋がりを持つことで、互いの心に充足感が得られる。たしか、恋人同士のセックスというのはそういうものだと書いてあったはずだ。

 ところが、いちばん互いをわかり合えるはずの方法で千晃のことを理解できたかというと、かえってわからなくなってしまった。

(馬鹿だな、わたし。Renにだって、あれほどだめだって言われてたのに)
 親身なアドバイスを無視して、捨て身の行動に出ることで、千晃までも傷つけてしまったのは確かだった。
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