365日のラブストーリー
 千晃が一度振り返る。有紗はどうしたらいいのか分からないまま頭を下げた。
 人事部宛ての封筒を胸に抱えて、憂鬱な気持ちでエレベーターのボタンを押す。

(普通って、どうやるんだっけ)

 考え出すときりがなさそうだ。しばらくのあいだは、できるだけ総務部に近づかないようにするしかない。そうすれば、問題の解決にはならなくても、千晃を不快にさせることはないだろう。

 マイナスの方向に行かないようにと、そればかり考えているような気がする。頭をリフレッシュさせて仕事の続きをやらなければ。

(そういえば、マリアージュ!)

 すっかり忘れていた紅茶の存在を思い出して、有紗はエレベーターを降りるなり、慌てて給湯室に直行しようとした。けれどももはや手遅れだったことは、人事部の扉を開けた時点で気がついた。

 殺風景なオフィスには、甘い香りが漂っている。明らかにこれは――、思い当たる人物が一人しかいなくて、有紗は部長席に視線を向ける。

 すると、マグカップを片手に優雅なティータイムを楽しんでいた宇美が、ひらひらと手を振ってきた。


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