365日のラブストーリー
「言っているだけで、上手くいくとも限りませんよ」
 感心する有紗に釘を刺して、神長は二杯目のオーダーをする。

「美味しいですね。素材の旨みを引き立てるような味付けで。俺は好きです」
「わたしも好きです。あのご夫婦と食事に行くときにはどのお店だったら喜んでもらえるのかな、なんて、今から帰りに渡すおみやげまで考えたりして。今から楽しみです」

 口にはしなかったが、長期の旅行から帰ってきた後に少なくとも一度は会えるのだという確約が、さらなる喜びにつながっている。

「神長さんの旅行中、全力で品の良いお菓子の研究をします」
「きっと綿貫さんの選ぶものなら、何でも喜んでくれると思いますよ」

「いえいえ、そんなことは」
「自分たちのために一生懸命考えてくれた、という気持ちを何よりも嬉しく思ってくれるような人たちですから」

「ああ、やっぱり……」
 有紗は神長を見つめた。

「神長さんのことが大好きです」
「俺ですか? 今言っているのはただの事実ですよ」
「でも、そういう事実がわかるのは、人を優しいまなざしで見ているからなんだなって」
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