365日のラブストーリー
(わたしと心暖ちゃんだけの関係)
 有紗は『母親』というキーワードではっとした。千晃と付き合っていたときにも、ずっと引っかかっていた言葉だ。

(あの子の母親になれるかなれないか、そればっかりを考えていたけど。子どもと大人の関係は、何も親子に限ったことじゃないよね)

 気持ちが吹っ切れると『ありがとう、Ren』と返事を打って、スマートフォンをしまった。有紗は列を抜けて行列の後方に向かう。

 千晃は脚にしがみつく心暖をなだめていたが、近寄るとすぐに有紗に気がついて、気まずそうに目を背けた。

「心暖ちゃん」
 有紗が声をかけると、心暖は泣き顔のまま顔を上げた。

「ありさちゃん?」
 しゃくりあげながら千晃から離れて、今度は有紗の脚にしがみついてくる。

 どうしてここに居るのか。なぜ最近ずっと遊びに来ないのか。そんなことよりも今ここに有紗がいることが、彼女にとっては何よりも重要なことなのかもしれない。
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