365日のラブストーリー
 落ち着きはじめた頃、有紗は心暖の手を取った。

「ここのパンケーキはふわふわで美味しいんだよ。ホイップクリームもたっぷりで心暖ちゃんも好きだと思うな」

 店の窓から店内のようすを覗くと、食事を楽しむ人たちの姿が見える。これを見せてあげられたら、と思っていると、千晃が察したように心暖の身体を抱き上げた。

 心暖は口をぽんと開いたまま、窓ガラス越しのテーブルを見つめている。シロップやカラフルなチョコスプレーのかかった生クリームのタワーに釘付けのようだ。

「あれ一緒に食べようね。きっと美味しいよ」
 頷く心暖にほっとすると、忘れかけていた千晃の存在を思い出した。

「あ、すみません。勝手に現れて、森住さんの意見も聞かずに一緒にごはん食べるとか言い出して」
「いや、それは別にいいんだけど」

 千晃は申し訳なさそうに俯いて「ごめん」とつぶやいた。
「ちなみに俺はここまで有紗ちゃんの恋路の邪魔しにきたわけじゃなくて」

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