365日のラブストーリー
「え?」
「まきさんが神長さんに会いに来るっていうのを聞いて、もし何かあったとき力になれたらとか、そっちが目的だから」

「ありがとうございます。わたしもふたりが元の関係に戻れたらいいなって、ずっと思っていたので」
「それは知ってる」

 以前坂巻とふたりで話をする時間を作ってくれたのは千晃だ。関係修復を手伝おうとするのは、坂巻と神長のためだけではなく、有紗のためでもある。

 距離を取ってからのほうが、千晃からの優しさによく気づく。付き合っていたときは、自分の気持ちに向き合うことに精一杯で、たくさんのことを見過ごしていたのだろう。申し訳なさが、有紗に頭を下げさせた。

「まあ、そういうのがあって来ただけだから、有紗ちゃんももう無理するなよ。俺と心暖のこととかさ」
 大丈夫だから、と千晃は目を細めた。

 行列は徐々に短くなっていく。心暖が店内の様子に夢中になっているうちに、と千晃がそれとなく仕草で伝えてきたが、有紗には列を抜けたり、戻ったりする気はなかった。

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