365日のラブストーリー
(もし神長さんだったら)
 期待が外れるかもしれないと覚悟をしながら、有紗はおそるおそる画面を見た。

『神長廉』
 慌てて通話を押したとたんに、スマートフォンがベッドの下に滑り落ちた。拾い上げて、スピーカーを当てると「もしもし」と耳元に優しい声がする。

「すみません、うとうとしていたのでスマホ落としちゃって。どうしたんですか?」平静を装って訊いてみる。
「部屋ですか?」

「はい」
「いま、綿貫さんの泊まっているホテルのレショプションに来ています」

「え。……どうしてですか」
「少しだけ下に来られませんか。……難しいようなら戻ります。抜けてきているので」
 質問には応えずに、神長は言う。

 何かあったのだろうか。有紗には会わない、という選択肢はなかった。ほんの少し顔を見れるだけでもいい。

「いきます」
 有紗がはっきりと返事をして電話を切った。姿見の前で髪を整え、崩れかけたアイメイクを指先でとる。
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