365日のラブストーリー
「か、神長さん?」

 唇を塞がれる。熱い舌が有紗のことを探っている。『怖い』から葛藤を乗り越えて『大丈夫』になったばかりのところにいたはずなのに、感情はその先にある、未知の領域に突入しようとしている。

 心がほどけて、有紗は彼の背中にしがみついた。

 神長は有紗の髪が顔にかからないように、耳にかけてくれる。その甘やかな手の動きに、身体の芯が震えている。有紗は思わず熱の籠もった息をこぼした。

「ワンピース、よく似合っています。千晃から随分いろいろと言われましたけど」

「せっかくの休暇に押しかけるのに、わたしが仕事を引きずってきたらいけないと思って。あとは、普段とは少し違うわたしを見せたかったのかも」

「なるほど。俺をその気にさせるためというわけですね」

 口調は挑発的でも、指先からは躊躇いを感じる。鼓動から感じる緊張や、ひとつひとつの仕草から感情を正確に読み取ろうとする深い眼差し。万が一にも自分の手で傷つけることがあってはならないと、気配りをしてくれているのを感じる。
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