365日のラブストーリー
 これから神長と、芝公園にある豆腐をメインとした懐石料理の店で夕食の約束だ。けれど今日は他にも会う予定の人がいる。いつか元町で出会った老夫婦だ。

 会社を出て急ぎ足で、神長と待ち合わせをしている駅最寄りのカフェに向かった。ランチでもときどき訪れるその店には、女性客が多い。彼の姿はすぐに見つかった。

 細身の白パンツ、深い海の色を思わせる青いシャツ。窓の外に向けている、見飽きることのない横顔の美しさに、有紗は心の中で感嘆の声を上げる。

「廉さん、お待たせしました」

 有紗がテーブルにたどり着くと、まわりの目が一斉にこちらに向いた。女性たちからの品定めするような視線にはまだ慣れない。そんなとき、神長から愛情のこもった視線を受けると、すべてが吹き飛んでしまうのだが。

「おつかれさま。買ってきましたよ、ウエストのドライケーキ」

 神長は老舗洋菓子店の紙袋を掲げた。以前素敵な日本料理屋を教えてもらったお礼にと、さまざまな手土産を考えたのだが、結局は鉄板で落ち着いた。
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