365日のラブストーリー
 西洋館をめぐりながら、たくさんの話をした。小説を通じて恋愛の価値観を聞くと、家に帰って小説を読み直して、神長の価値観を探ろうとした。優しい言葉をかけてもらうと、嬉しさと共に押し寄せてくる罪悪感に胸が苦しくなったときもあった。

(あの頃、廉さんはわたしのことどう思っていたんだろう?)
 神長はあまり自分から昔の話をしない。有紗はあらためて、これまで彼がどんな想いを抱えていたのか訊いてみたくなった。

 扉の外から声が掛かり、スパークリングワインが運ばれてきた。先付の小鉢、八寸と春らしい彩りの料理が並べられる。

「わあ、きれい」
 乾杯も忘れて料理に見とれる有紗の膝に、神長の手が触れて我に返る。顔を上げると永田夫妻が笑みをこぼしていた。

「すみません」
 有紗は慌ててグラスを手に取った。

 食事中は旅行の話や、その土地の料理の話で盛り上がった。直近の旅行の話を振られたとき、有紗は週末プラスアルファの短い日程で訪れた、グアムの話をしてみた。
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