365日のラブストーリー
「案内させてもらいます」

「そんなに気を遣わないでね。わたしたちはこうやって、時々二人とお食事できるだけでも満足だから」
 絵津子は永田と顔を見合わせて、目で会話をしている。

「……神長くんは、もしかしたら苦労するかもしれないなあ」
「そういうところが有紗ちゃんの良いところなんだから、苦労にならないわよ。ねえ」
 話を振られて、神長は「はい」と笑っているが、有紗は首を傾げるばかりだった。

「あなたたちは仲が良いから、二人きりの時間ならいつでも取れるって考えているでしょう。でも、明日大きな災害が起こるかもしれないし、いつ家族が病気になるかもわからないわ。だからほんとうに、大好きな人との時間を大切にね」

 ごめんなさいね、お説教をする気はなかったんだけれど、と絵津子は口元に控えめな笑みを浮かべる。
 いまは幸せそうに見えるこの二人も、たくさんの苦労を乗り越えてきたに違いない。

 幸せなときは、悪いことが起こるなんて頭の隅にもないけれど、確かに明日は何が起こるかわからない。会える日も会えない日も、神長のことを想って、それでももし何かあったとき仕方ないと割り切ることができるだろうか。
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