365日のラブストーリー
 こんな風に熱っぽい視線で誘われて、断れる人はいるのだろうか。首を縦に振ると、神長はふわりと微笑んだ。

「わたし、さっき絵津子さんからふたりの時間をもっと大切にって言われたとき、思ったことがあって」
 有紗はためらいながら切り出してみた。

 会うたびに好きが積み重なって、優しい気持ちになっていく。これを毎日、一年、十年、もっと長い時間の積み重ねでこの人のことを深く愛せたら。

 吹く風が春の香りを運んで、有紗はライトアップされた八重桜を見上げた。手のひらにひとひらの幸せが舞い込んできた。

-fin-

・-・・・ -・・- -・--

 有紗はじりじりとして落ち着かなかった。
 高級住宅街の白々とした道路を折れて、ジープがぎりぎり通れる幅の路地に入る。助手席の窓から見慣れた家並みを見ながら、ため息をこぼした。

 これから久々の帰省だ。ただし、ただの顔出しではなく、神長を両親に紹介するための。
 母からゴールデンウィークに旅行はどうかと誘われたとき、断ったのがきっかけだった。理由を訊かれて「つきあっている人がいる」と白状したら「きちんと紹介しなさい」と強く言われ、それを振り切ることができなかったのだ。
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