365日のラブストーリー
 ほんとうは訊いてみたいことがあったのだが、伏せたままでいた。神長は有紗の肩を引き寄せて、額に口づけた。

靴を履いていないときは身長差が顕著で、自分からは何もすることができない。悔しがる有紗を見ながら楽しんでいる神長をずるいな、と思ってしまうが、少し強引なくらいに甘やかしてくれる彼も好きだなんて重症だ。

「廉さん、何をしていたんですか?」
「少し考えごとを」
 にぎやかすぎた家族のことだろうか。

「仕事のことですよ。それにしても、優しいご両親ですね。今のあなたがどうやってできたのかがわかって、楽しいひとときでした」
 心の声を読んだように、神長が応えた。

「……愛情たっぷりすぎちゃったせいなのか、子どもの頃は世の中のいろんなことに免疫がなくて、外に出ると泣いてばかりでした」
「へえ?」

 促されて有紗は、部屋の中央にぽつんと敷かれた布団の上に座った。すぐ隣に神長がきて、寝転んだ。もしふたりで同じ布団の上にいる姿を見られたら大変だ。そう思いながらも、腰に回される手には抗えないものを感じて、有紗も姿勢を崩す。
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