365日のラブストーリー
『はい。どこでも大丈夫ですよ』

 宇美がぶつぶつと文句を言いながらメッセージを返信している間に、ささっと文字を打つ。こういうのは勢いが大事だ。

(あれ?)

 メッセージアプリを閉じてから、有紗はふとRenの意見とは別の方向に動いていることに気がついた。宇美とRenは共通することを言いながらも、千晃と神長という別の人間を推している。

 千晃との関係をひとつの恋愛経験として、なんて器用なことはできない。Renの言うとおりかもしれないとも思う。

けれども宇美と話をすると、流されてみるというのも、悪くないような気がしてくるのも事実だった。それは、もともと自分の中にそういう考えがあったからかもしれない。

(Renごめんね。でももし何かあったら、力になってくれるよね)
 有紗は申し訳なさを感じながら、暗転したモニターを見つめた。



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