365日のラブストーリー
「下がらないな。心暖けっこう平熱も高いから、これくらいだと微熱のうちだけど、一応薬飲ませるかなあ。そのほうがよく寝られるしな」

 千晃がつぶやくと、心暖が顔をしかめる。

「わたしも嫌いだったなあ、シロップの薬。甘い味がついてるけど、それが薬の味っていうふうに覚えちゃうと、やっぱりいやなんですよね」

 歯磨き粉や、ジュースの人工的に作られたいちご味を口に含むたびに、風邪のシロップ薬を思い出してしまうから、たくさんの苦手なものができてしまった。

「心暖、早く元気にならないとパパも仕事に行けないし、有紗ちゃんと一緒に遊べないから、ちゃんと飲もう」

 縦にも横にも首を振らないかわりに、心暖は瞳に涙をにじませた。千晃は空になった皿を持って、薬をとりに部屋を出る。
 二人きりになると、有紗は心暖の手をもう一度握った。

(きっと、お父さんのためにも早く直らなきゃって思ってるんだろうなあ)
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