365日のラブストーリー
「買い物も助かった。実は前に、心暖が寝てる間にそっと買い物にいったら、俺のこと探して家の外に出て泣いてたことがあって、冷や汗でたよ。それからなんか心配で」

「弱ってるときに一人で、不安でいっぱいになっちゃったんでしょうね」

「そうそう。でもそういうときに限って、食材ストックがなかったりするんだな。どんなときでも目を離せないっていうのが、結構つらいんだわ。料理もそうだし、変な話トイレだとか風呂だとか」

「なるほど……」
 男親に女の子の取り合わせだと、そういう意味の苦労もあるのかもしれない。長時間の外出になる買い物に、付き合わされた理由にも納得できる。

きっといま、簡単に想像がつくことの何倍もの苦労があるのだろう。想像を巡らせているうちに、有紗は黙り込んでしまった。

千晃の望む恋人の役目には、自然とそういうものも含まれるに違いない。
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