365日のラブストーリー
「とりあえず俺らも飯にしよっか。何がいい?」千晃が椅子を立った。
「えっ」

「有紗ちゃんも得意かもしれないけど、俺もそこそこやれるよ。まあ、料理始めたのは心暖とふたりで住むようになってからだけど」

「わたしも始めたのは、就職して一人暮らしするようになってからなので、得意と言えるかというと……」

 有名レストランのレシピ集めが趣味で、誰に食べさせるわけでもなく再現を試みるくらいだが、作るのと食べるのとでは、天秤は食べる方に傾いている。

「なんだよ、俺と変わらねえし。なんとなくベテランのイメージだった」
「すみません、何もかも期待外れで」

「何もかもって?」

 冷蔵庫を物色していた千晃が振り向いた。まさか、今日厚みチェックのように抱きしめられたときの話だとは言えずに、有紗はうつむいた。
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