365日のラブストーリー
そして会社ではない場所で二人きりになってみるとまた、これまで知らなかった素の千晃が見えてくる。
下がった口角と対照的につり上がった目や、飾ったところのない正直すぎる言葉にどうしても怖いイメージがあったのだが、二人のときはよく笑うし「有紗ちゃん」と呼びかける言葉に棘はない。
(森住さんってたぶん、恋人にだけ優しい人なんだなあ)
会社にいるときは仕事用のクールフェイス。子どもと一緒にいる時間は完全に父親の顔。病気で苦しんでいる心暖のことを思うと胸が痛むが、もしかしたらこうやって、素の自分に戻れる時間は、千晃にとって貴重なのかもしれない。
(それとも、これは恋人用の顔で素の森住さんじゃないのかなあ)
辛くなりすぎてしまった鶏肉のトマト煮込みを、涼しい顔で口元に運ぶ千晃を見つめながら、有紗は考える。
(わたし、ないなあ。そういうギャップみたいなの)
のんびりとマイペースなまま、二十四年間も生きてきてしまった。
下がった口角と対照的につり上がった目や、飾ったところのない正直すぎる言葉にどうしても怖いイメージがあったのだが、二人のときはよく笑うし「有紗ちゃん」と呼びかける言葉に棘はない。
(森住さんってたぶん、恋人にだけ優しい人なんだなあ)
会社にいるときは仕事用のクールフェイス。子どもと一緒にいる時間は完全に父親の顔。病気で苦しんでいる心暖のことを思うと胸が痛むが、もしかしたらこうやって、素の自分に戻れる時間は、千晃にとって貴重なのかもしれない。
(それとも、これは恋人用の顔で素の森住さんじゃないのかなあ)
辛くなりすぎてしまった鶏肉のトマト煮込みを、涼しい顔で口元に運ぶ千晃を見つめながら、有紗は考える。
(わたし、ないなあ。そういうギャップみたいなの)
のんびりとマイペースなまま、二十四年間も生きてきてしまった。