365日のラブストーリー
 言葉の意味はよく飲み込めずにいたが、何故かここで頷いてはいけないような気がした。有紗が黙りこくっていると千晃は短く息を吐き出した。

「映画でも観る? あとで有紗ちゃんが好きなの選んで」

 それがどことなく投げやりに聞えて、有紗の心に影が落ちる。会話についていけてないまま流されてしまうのは悲しいが、千晃のやりたいことをしつこく訊いたら鬱陶しく思われてしまいそうで、それもできなかった。

 食事を片付けまですべて終えて、リビングのソファに横並びで座った。洗いもので冷たくなった千晃の手が、有紗の指に触れる。

TVモニターに映し出された新作映画の一覧から何かを選ばなくてはいけないのに、意識が指先に向く。

「俺最近はひたすらアニメだから、久々だな」
「アニメ好きですよ。ディズニー映画とか、学生のころは結構観に行ったりしてましたし」
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