365日のラブストーリー
「そりゃそうだよな」

 千晃は腕組みして、ソファの背もたれに頭を乗せた。それからしばらく何かを考え込んでいたが「とりあえず触ってみていい?」と淡々とした口調で訊いてきた。

スカートの内側に千晃の手が伸びる。どこに触れるでもなく、いきなりタイツを脱がせにかかってきた。いつかは服を脱がなければいけないのかもしれないが、その行為がどうしても何かの作業のように感じてしまい、有紗の目に涙がこみ上げてきた。

こんな時に泣き出したら最悪だ。相手を責めているように感じさせてしまうし、ますます面倒くさい女になってしまう。そう思う気持ちに反して、雫がぽろぽろと頬を伝っていく。

「え?」
 ふと顔を上げた千晃が細い目をめいっぱい見開いた。あわてたように両手を顔の高さまで上げる。

「やっぱり今日はなしってことで」
 千晃はソファから立ち上がった。
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