365日のラブストーリー
 周りに迷惑までかけて最悪だ。そう思うのだが、限界だった。有紗は誰に挨拶をするでもなく立ち上がり、鞄を掴んだ。

 これ以上宇美に心配を掛けないように、日常のしっかりした足取りを意識しながらエレベーターホールへ向かう。すると後ろから同僚の女性がコートを持ってきてくれた。ひどい忘れ物だ。

 情けなくなりながらそれを受け取って、到着したエレベーターに乗り込んだ。
有紗はしゃがみこんで、そのまま壁に寄りかかる。

同じ風邪を引いていたのだとしたら、心暖はどれだけしんどかったのだろうと、胸が痛くなってくる。いい大人がこんなことでへばっていては恥ずかしい。

(ああ、でもしゃがんだら今度は立つのがしんどいなあ)

 電光掲示板の数字を眺めていると、エレベーターが途中階で止まった。有紗は慌てて立ち上がる。そこに乗り込んできたのは神長だった。

「お疲れ様です」
 有紗とほとんど同じタイミングで、神長が頭を下げた。
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