わたし、BL声優になりました
「失礼ながら社長、黒瀬の行動に気づけなかった監督不行き届きの責任は私にあります」

 赤坂の援護とも取れる行動に、黒瀬は僅かに眉根を寄せる。

「……そうだね。一般的な会社なら連帯責任かもしれないね。

 でも、違う。僕達はその一般的な会社とは違うんだ。見られる立場であって、魅せる側の立場でもあるんだよ。

 謝罪して、『はい、これで終わり』ってわけにはいかないんだ。一度落とした不良品は誰だって使いたくはないだろう?」

 自分自身が商品で、自分自身を消費して、犠牲にして、この職業は成り立っている──。

 田中社長はそう言いたいのだろう。

 業界における暗黙のルールを破った黒瀬を、好き好んでこの先も起用したいと思う企業は、ぐっと少なくなるはずだ。

 今回の騒動は、それほどまでに大きな影響を残してしまった。

 例え黒瀬が声優を辞めたところで、現状は何も変わらない。

「黒瀬くん、白石くんを見つけてきて。きっと、独りでとても寂しい思いをしているはずだから。助けに行くのは先輩である君だよ」

「社長?」

「……君たちを守れなくてすまない」

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