わたし、BL声優になりました
「なっ……、私で遊ばないでくださいよ! 計画ってこのことだったんですか? 子供じゃないんだから」

「これは珍しい。怒ってるね」

 ワイングラスをゆっくりと傾けながら、緑川が微笑する。

 まさか、こんな計画だとは、ゆらぎは思ってもいなかった。黒瀬に性別を明かして、緑川には何のメリットがあるのか。

「明日が楽しみだなー」

「帰ります」

 怒りが収まらずに、ソファから立ち上がったゆらぎの腕を緑川が掴む。

「ダメだよ。もう終電もない」

「なら、歩いて帰ります」

「結構な距離だと思うけど?」

 確かに、緑川の自宅から事務所まで、歩いて帰るには距離がある。

 緑川の罠に落ちた自分に悔しさが滲む。

「……悪趣味ですね」

「そう? 普通だと思うけど。それに、君は男装よりも、本来の姿の方が可愛いと思うし。ボクがその姿を見てみたいっていうのも本音」

「本来の姿って、女性の姿が見たいってことですか?」

「だから、さっきからそう言ってるんだけど」

 ……なんで? ウグイス先輩のただの好奇心?

 つまりは……どういう意味なんだろう。

「……結構、鈍いね」

「何がですか」

「いや、いいよ。これはこれで面白いし」 

 緑川は苦笑して、ワインを呷った。
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