羊かぶり☆ベイベー
「笑い事じゃないよ」
ぴしゃりと言い放たれて、一瞬、固まってしまった。
汐里の厳しい口調を聞いたのは、初めてで。
まさか、そんな風に言われるとは予想外だった。
「仕事は別として……自分の彼氏が他の女と居たなんて、悔しくないの?」
悔しい、とは思わなかった。
悲しいわけでもなく、憤りでもなく。
虚しかった? それもまた違う。
いくら言葉を並べようと、答なんて出てきやしなくて。
しばらく黙り込んで、考えていた。
意識して、考えを巡らせれば巡らせる程、答が遠ざかっていく感覚するばかりで。
改めて、汐里を見ると先程の勢いは消えて、いつの間にか眉を八の字にしている。
それは、まるで困っている私の鏡になってくれている様だった。
きっと今、まさに私はこんな顔をしているに違いない。
私の周りには、私以上に私のことを想ってくれる存在が、こんなにも居てくれるのに。
誰にも、応えることが出来ていなくて、申し訳無い。
──情けない。
そんな思いから、言葉が喉から押し出される。
「どうしよう……汐里。分からない」
「みさお……」
「今、本当に、そういうのが分からなくなっちゃってて」
汐里には、私の中に入ってこられても、嫌だとかそんなことは思わない。
私がそう思えるのは、ある2人だけ。
気心知れた同期の汐里。
もう1人と言えば。