羊かぶり☆ベイベー
「本当にいろいろ、ごめんね」
「もう、謝るの止めてよ……って言いたいところだけど、私の方こそ、ごめん」
「そんな、なんで汐里が謝るの」
「さっき、偉そうなこと言っちゃったし……。最近、みさおにしては珍しく暗ーい顔してることが多いのにも気付いてたのに。それなのに、私も立ち入り過ぎちゃ駄目なのかなって思って」
「余計に気を遣わせちゃったね」
「ううん。怖じ気付いちゃってごめん。これってもう、ただの言い訳だ。本当にごめんね」
汐里は苦笑いを浮かべる。
踏み込み過ぎることも、怖じ気付いて、放ったらかしてしまうことも、いけない。
そんなことを言って彼女は申し訳なさそうにするが、それが一般的に当たり前のことなんだろう。
「親しき仲にも礼儀あり」という言葉があるように、ある程度は弁えなければならない。
立ち入り過ぎてはいけない、傷付けないように、と彼女なりに配慮してくれたのだ。
彼女は何も間違えてなんていない。
謝ることなんて、何一つない。
ただ大切に想ってくれていることを実感できただけ。
申し訳ない程に。
いつも思いやりに溢れた彼女と、私は対等に居たいのに、それが容易いことではないから悔しい。
「いつも本当にありがとうね」
率直な本音は、すんなりと言葉になった。
はじめ汐里は困った様子だったが、直ぐに微笑み返してくれた。
そして、少し間を置いた後、汐里は呟いた。
「1人で頑張ってたんだよね、みさお」
汐里のその言葉が聞こえた瞬間、胸がチクリと傷んだ。
──ごめんね、私、1人じゃなかったんだ。
いつもなら、これもグッと呑み込んで、誤魔化した笑いで上塗りしてしまう。
余計なことは言わなくていいことだって、もちろんあるかもしれない。
でも、きっと今は善くないときだ。