羊かぶり☆ベイベー
「まさか、今は彼より好き、だなんて言わないよね」
「なっ」
それは、きっと、無い、と思いたい。
直ぐに返事をしなければ、本当に怪しまれてしまう。
否定をしようとしたと同時に、汐里の声が被った。
「どうしちゃったの、みさお。彼と上手くいってないからって、いつの間に……」
「ちっ、違うよ! 本当に何もないよ。あの人、実は、委託って形で、うちの会社で産業カウンセラーしてるの」
「カウンセラー? 社員じゃなかったんだ」
「そうだよ。それで、私、あの人にカウンセリングしてもらってたの。彼のこととか、私自身のこととか……」
「みさお自身のこと、って?」
私自身のこと。
情けなくて、人に聞かれたくないことだったくせに、今ならサラッと言えてしまいそうだ。
「私が、弱いから」
「みさおは、弱いの?」
「……うん。彼は私との関係をどうにかしようと、頑張ってくれてたのに、私は逃げてばかりだから」
本当のことだから。
汐里は静かに私を見つめ、表情で相槌を打つ。
「私も素直になれるように、私も彼のこと、ちゃんと好きになれるように頑張りたかったから、話を聞いてもらってたんだけど……」
途中経過の結果は、結局、何も変わっていない。