自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
娘らしい明るいお喋りの声が満ちていた応接室は、王女が入ってきたことで一旦、静かになる。

このようなサロンパーティーは、年に四回ほど、ホストとテーマを変えて定期的に開催しているため、全員が友人関係にある。

とは言っても、この中で最も崇高な地位にある王女に対する礼儀は重んじられ、近づいていくセシリアに皆が立ち上がって会釈した。


「セシリア様、ご機嫌よう」

「お久しぶりです。本日はお会いできるのを楽しみして参りました」


あちこちから挨拶の声がかけられ、微笑んで応えるセシリアは、客席のすぐ後ろで足を止めた。

隣に並んでいるイザベルが、なんとなく面白くない顔をしているのは、どういうわけなのか……。


イザベルはセシリアの背中を軽く叩いて、「ほら」と遅刻を詫びるように催促する。

王女には敵わずとも、イザベルも公爵令嬢というかなり高い地位にいる。

幼い頃からの親友ということもあり、王女を呼び捨てて背中を叩ける令嬢は、イザベルくらいのものだろう。
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