自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
それを不快に思ったことは、ただの一度もない純真なセシリアは、「ええ」と頷いて他の令嬢たちに向けて頭を下げた。


「皆さん、遅れてごめんなさい。開始時間を勘違いしていたの。随分とお待たせして、失礼なことをしてしまったわ。どうかお許しください」


両手をお腹の前で揃え、頭を上げない王女に、令嬢たちは慌てた様子で口々に声をかける。


「ほんの十五分ほどですわよ。どうかお気になさらないでくださいませ」

「皆さんと楽しくお喋りしていましたので、待たされた気はしませんわ。どうか頭をお上げください」

「いつも優しいセシリア様に、わたくしたちは感謝しているほどです。たとえ数時間遅れてお越しになっても、誰も不愉快には思いません」


セシリアを気遣う令嬢たちの顔を見れば、その言葉に偽りはないようである。

怒らずに優しい言葉がけをしてもらえる理由は、これまでセシリアが、誰に対しても親切な対応をしてきたからであろう。


顔を上げたセシリアが、「皆さん、ありがとうございます」と微笑んでお礼を言えば、パチパチと拍手が湧いて、温かな雰囲気に包まれた。
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